タマ、秋に出会う。
千月 話子

眩しい空を 眺め過ぎた僕は
涙のように 暖かい 目薬を差しながら
 「タマを探しています。」の
張り紙を 貼った
3丁目の電信柱の 角を曲がる

湿った目に もうすぐ気持ち良い刺激が
訪れるはずだったのに・・・・・。


不意に出くわした 枯葉色の馬に弾き飛ばされた!


目からウロコ 目から水玉 目からコンタクト 流れ
       僕の目薬 返してよ
空は青・・・ 空は紫・・・ 空は深紅に・・・。
       タマよ 早く家にお帰り

そうして 僕の夏は 終わったのだった。 / さよなら。


太陽の 濃い光を浴びすぎて ブロンズ像の俺は
ビデオに 向日葵のような女を 入れながら
隣の家の 屋根を渡る 猫の
長い影を追いながら 窓を閉める

乾いた目にもうすぐ 潤う快感が
訪れるはずだったのに・・・・・・・。


不意に飛び込んできた 枯葉色のイヌワシに
   掴み 放られた!


高ぶる感情 高ぶる怖れ 高ぶる体 萎え
     俺の彼女を 返せよ!
外は夕立・・・ 外は長雨・・・ 外に上着を・・・。
     あの猫は どこに行くんだろう

かくして 俺の熱い夏の夜は 終わったのだった。 / グッバイ!


8月を歩き疲れて 9月を過ぎた 私は
励ましの焼き栗と 煮干の匂いが染み付いた手を振りながら
レモン色の車の下や 公園の赤レンガのベンチの後ろを覗き込む

半分閉じかけた目に もうすぐ光りが宿って
 頬に 赤味が増すはずだったのに・・・。


不意に飛び出してきた 枯葉色の犬に 飛び掛られた!


真上に空 真上に光る鼻 真上にピンクの舌 くすぐったい
      私の煮干し 返してよ。
遠くで声 遠くで呼んでる 遠くで赤いトンボが・・・・・
      タマ、 見つけた!!

そうして 朗らかに 私の夏は終わったのでした。/ おかえり。


      今は 枯葉色の タマ

      本当は 白い猫

      秋を捕まえて

      「ただいま。」 と鳴く。

    


自由詩 タマ、秋に出会う。 Copyright 千月 話子 2004-09-11 17:32:50
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