俺は歩いてゆく。破滅に向かって。
虹村 凌

どうして俺はこうなんだろう。
ねぇ?

俺は死にたくない。
俺は俺の死を死にたい。
ジジイになりたくない。
病院で死にたくない。
体中に管通されてまで生き延びたくない。
酸素マスクなんてされて生きたくない。

でも、もっと無様な死に方かも知れない。
どっかの路上で、雨の日に。
くたばってるかも知れない。
死体の欠片も見つからない飛行機事故かも知れない。
時速160キロの二輪事故?
アメリカで?日本で?
それでも、俺は。
きっと、誰かに恋をして死ぬんだろう。
死ぬ間際に、誰かの名前を呟くんだろう。

その名前だけで。
独りで逝くんじゃないと思える強さの為に。
愛して死ねたんだっていう為に。
俺は、俺の死を死にたい。
俺の恐怖は、それを考える事が出来ないまま。
死んでしまう事なんだ。
怯えてる、全てに。
怯えている。

世界の終わりがあるのなら。
俺はそれには怯えないだろう。
それでも。
愛に終わりがあるのなら。
俺は、怯え続けるのだろう。
きっと、正直になれない。
嘘をついてしまう。
ねぇ、俺は嘘をついていたさ。
特別でいたかったから。
嘘を吐いたよ。

愛の終わりに怯えながら死ぬんなら。
シドとナンシーみたいな愛のままで。
我侭、俺はその中で死にたい。
次なんて無いんだ、俺には。
そんな中で、俺は俺の死を死にたい。
それは、きっと正しい路じゃないんだろう。
そうなんだろうな。

それでも。
俺は終わりに怯えながら生きるのは嫌だ。
楽になりたいのかな。違うんじゃないかな。
きっと、死ぬのに勇気は要る。
もう少し一緒にいたい、中で。
何時終わるともわからないんだ。
ねぇ?
部屋に戻って君がいなかったら。
俺はどうしたらいいんだ?
ねぇ?
君は 怖くないのかい?


初恋は巧くいかないものらしい。
俺も、あいつも、あのこも。
初めての彼氏とか彼女とかじゃなくて。
初めての、恋ってやつさ。
そして、きっと何時までも疼く傷。
何時までも、覚えているんだと思う。
それはね、感情が風化しても。
傷だけは痛いんだ。
根性焼きみたいに、痕は残るんだ。
そして、時々痛むんだ。
古傷。俺は、今でも苦しい時がある。

そして、俺はこれから怯えつづける。
君は、俺を愛してなんかいない って。
そんなのは嘘だって。
ねぇ、君は俺の胸じゃ泣かないんだ。
どんなに近くても。わかってるんだ。
俺は、疑い続ける。信じないんだ。

それでも、初めから疑う事が出来たら。
どんなに楽なんだろう。
俺は突然怯え出すんだ。狂ったように怯える。
嘘なら嘘って言ってくれよ、ってね。
俺も、あいつをそうさせてしまったのか?
白雪、どうなんだい?

俺は歩いている。走るんじゃない。
歩くんだ、ラバーソールで。
破滅に向かって、ゆっくりと。
正しい破滅なのか。
間違った破滅なのか。
そんなのは無いって?
俺は破滅に向かうんだろうよ。

もしも、夢を捨てた腕で妥協を抱えるのなら。
俺は、夢を拾いなおして失敗するよ。

俺は、俺の詩を死にたい。
持てる限りの意地をぶら提げて。
いや、持てる限りの意地を張り続ける。
張らない意地なんて、持ってる意味は無い。
たとえ貧乏になったとしても。
俺はラバーソールで歩き続ける。
ブラックストーンだって止めない。
貧乏でも、気前よくいたい。
貧乏はいいけど、貧乏臭いのは嫌だから。
ねぇ、お前の為なら何でもするさ。
ずっと、話しているよ。

俺がメルヘン世界の住人でもいい。
破滅に向かえば、メルヘン世界の端が見えるかな。
俺には、妖精なんて見えないけれど。
煙草の煙も、紫には見えないけれど。
パープルへイズ。俺は吐き続けるんだ。
破滅に向かって、その煙を。

今、少しだけ。
恋みたいなの、しています。
引かないでね。
何だろうね、どうなんでしょう。
俺、どんなカタチでもいいから。
もっと仲良くなりたい。マブダチになりたい。
そしてこれ以上、疎遠になりたくない。
嫌われたくない。
この気持ちはどうなんでしょう。
ねぇ 俺とお前は友達さ。

何番目だろう。
下らない嫉妬。
いいんだ。いいんだ。いや、よくねぇ。
でも、俺は。



破滅に向かっている。
きっと、光の射す方へ。
出口に向かって。
俺は、ゆっくりと歩いてゆく。



自由詩 俺は歩いてゆく。破滅に向かって。 Copyright 虹村 凌 2004-09-10 01:09:03
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