「 なのにまだなまぐさい。 」
PULL.







あてもなく書き滴ることばはいつもあなた宛てなのに届かない。


産んだ憶えもないおとこずっとおっぱいに吸いついて離れない夜。

空き家にしのび込むようにあたしの中にすべり込んでくるおとこ。

ホテルのキーを差し込むみたいにおまんこにおちんちんを刺すおとこ。


びりびりとストッキングを破かれながら痺れるように感じても。

ボタンを掛け違えるような手つきでおまんこの中まさぐるおとこ。


あなたの前で脱ぐたびにいつもあなたに見えない重荷を着てる。

あなたの上に乗っても重力以上の重みは落とさない憂鬱。

あれから何度も恋して愛してるなのにまだなまぐさい恋もある。


オオカミ少年みたいに「アイシテル。」と動く唇ピアスで留める。

引力みたいに引き寄せられてかつんと当たる歯までが愛おしい。


電池が二本あったなら直列でなく並列に列べるそんな彼。

漂白剤に犯されてしみしみと死んでゆく彼の不適切。

彼のポケットから転げ落ちたたまごも産むように踏んでみる悲劇。


脚のあいだの水路をとおり流れてゆくものの顔をまだ知らない。












           了。



短歌 「 なのにまだなまぐさい。 」 Copyright PULL. 2009-08-18 11:12:31
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