森は人に届く
石田 圭太


記憶を
残す
出来るだけ
美しい形のものを
渡す
それが
なんなのか知ったのは
ずっと
後の話





いつか
死ぬことを
知らずにうまれ
しばらくは
そのまま育った
小鳥が
ひとことだけ鳴くと
温かい
ひとまわり
大きな羽が
ふんわり
包み込んでくれる
優しい
朝の翌朝
木の枝に
巣は
見当たらず
その根元に
巣は
見当たらず
行く先を
注視すると
吹き飛ばされ
残されていた
命の痕跡





代々
墓守りのように
守る
行く先に
何も
変わらないでいられる
限界の線を
願いは
いつだって
表と裏
こんな爪がなければ
よかった爪がなければ
生きられないように
ぼくたちは
出来ていた





世界が座り込んで
ひとつずつ
諦めている
それは
言葉の森
なんて
単純な比喩ではなかった
手紙をひらくと
届く森があった
いつまでも
絵本には
それだけについて
描かれていた
 
 
 
 


自由詩 森は人に届く Copyright 石田 圭太 2009-08-13 15:30:08縦
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