エレジー
あおば

        090802


外れた声がうるさいと
隣の人から電話が鳴った
ぶち切れそうな声だった
歌う声が耳障りだと
嫌われますから
音楽の先生がやって来て
その声の身振りが手振りが
君を丈夫にするのだと
楽譜に合わせて
延々と調子の外れた歌声が流れ
耐えきれなくなったのか
隣人がぶち切れて
警官を呼んできて
大騒ぎとなった
そこまでが想定内で
巧くいった
くすっと含み笑いをした途端
うるさいなぁと
ミミズクの声がして
見たことのない鳥を
真夜中に
起こしてしまった
頭を掻き書き
見たことのない鳥を追いかけて
鶏の姿を思い描き
下を向いては
頭を下げ続けて
部屋から部屋へと
謝りながら
彷徨いているうちに
朝になってしまった
昼には昼の仕事があって
忙しくて眠っては居られない
今日も辛い日が始まって
終わることのないお小言を
たくさん頂戴して
お金持ちのような気になっているのが
誤解の始まり
大きな声で歌を唄っては
警官隊と衝突を繰り返して
それから曲の手直しをして
仕事に行って
お小言を頂戴して
憂さばらしに歌を唄って
警官隊と衝突して
豚箱に放り込まれ
目が覚めたら
朝だった
仕事に行って参りますと
ネクタイをしてから
鶏に餌をやり
見たことのない鳥を
探しに行く
青い鳥だから
探しに行くことはないと
家の中にいると
知ってはいるのですが
家にいたのでは
もうけが出ないので
外に追い払ってから
捕まえるのです
大声で歌って
警官隊と衝突して
豚箱に投げ込まれるのも
想定内のことです
ネクタイの柄は
毎日変えます
同じ柄だと
馬鹿にしていると
みんなから嫉まれるので
ネクタイは毎日変えるようにしております
冥王星では
変えなくてもよいのかも知れませんが
見たことのない鳥が飛んでいる地球上では
毎日変えないと仕事にならないのです
毎日警官隊と衝突して
豚箱に投げ込まれていると
丈夫になって
空を飛べるようになるかも知れないと
思う君は
間違ってます
人は
どんなにトレーニングを積んでも
独力では
羽根を付けない限り
空を飛ぶことが出来ないのです
見たことのない鳥ですら
鶏だって
訓練すれば空を飛べます
美味しいお肉をほおばりながら
空を飛べる鶏の絵を
頭に描き
どんなに辛くても
空を飛べるのだから
我慢しなさいと
頭の中の絵の中の見知らぬ鶏に語りかけたところ
大きなお世話です
貴男は貴男のお仕事をきちんと果たしてくださいと
とととと とととと とと と
モールス信号のように頭の中を突っついてくれました
お返しに
とんとんとん と
肩を叩いてやりました


自由詩 エレジー Copyright あおば 2009-08-02 00:53:25
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