暫定
本木はじめ
禁煙するために
両手をじっくりと見た
花びらが散るように
どこかで終わりが開いた
忘れていた夢が疼く朝
雨が降っているので
部屋はひどく暗かった
少し苦い珈琲を飲みながら
この行為についての意味を考えた
煙は見えないが
この部屋は随分前から
呼吸していない
窓を開けるためには
立ち上がらなければならない
どこか遠くの谷間に咲く
美しい花を想った
言い残したことが
たくさんの蝉の死骸のように
放置されたまま
毒薬みたいな予定ばかりが
残されている
黒い行き止まりの部屋の中
巨大な穴みたいな夜が開き欠けている
盗まれた王冠のように
無意味な
無意味な
象のようにおほきな夜が
僕を数えはじめている