輪郭
あおば

              090729−30


輪郭が無い人は
お化けか
死人ですなと
噺家さんが鼻歌を唄ってる
長閑な気配の中にも
噺家さんの輪郭が明確であり
付け入る隙がないと
お弟子さんのような感想を漏らす
ようななどの曖昧な表現はいけませんと
カワガラスが水から顔を出す
水の中は曖昧な存在は許されない
密度が600倍もあるから
ぼんやりしていると
吸い込まれて溶けてしまうし
流されてしまったり
我慢して耐えていると
ご存じの苔が生え
鮎に背中を囓られて
喜んでいる訳にもいかなくなる
緩い拘束が輪郭を太くして
映像を濃くすると
素人カメラマンが訳知り顔で解説するから
見知らぬ初老の紳士が今夜は如何ですかと
誘うので
バイクのエンジンはいつでもスムーズに掛かるのだと
点火プラグは悠然と放電を開始する
電気の火花が狭い燃焼室で弾けて燃料を燃やす
音が出るのは同時だが
音は特に力とはならない
ただうるさく弾けた感じを表現するだけで
実体は力の中に潜んでいて
誰の目にも見えないようだ
曖昧な表現は力を削ぐと
自転車のスポークがキラリと放つ
どこまで行っても終わりのない道は
Uターンするしかないのだと
輪郭を好む文字の習性がアルファベットを唱える声がして
ゴシック体が元気よく
うるさいくらいに響いてる


自由詩 輪郭 Copyright あおば 2009-07-30 21:46:48縦
notebook Home 戻る  過去 未来