まごころを君に、
e.mei



わたしは消えてしまった光をのみこんでおちてゆくので
海へとかえってしまう
小さな夢が微笑みながらわたしのほうに歩いてきて
わたしは夢の続きへとはいっていかなくてはならない


(教室で先生が小さな猫を撫でているのは夕暮れのせいだ
 夜になるのがこわいので走らなければならないわたしは
 走らなければならないのに
 校舎のとおくから音がする
 生きていたひとたちがそっと並び待っているおと
 おと おと おと
 窓の外が白くなって今はふゆなんだと確認したからといって
 どこからが雪でどこまでがわたしなのかはわからない
 さむい さむいよ)
(耳の奥で猫の声がする
 こぽこぽ溢れだした先生はもう見えなくなった
 学校ってこわいな
 こわい
 教室のなかには水がなく 溺れている人も いない 今は
 飛び込む水もない
 流れていかないでよ、先生、
流れていかないで
 ――いかないで ……)


 あ、 ねえ、 ほら
また猫がないたでしょう
今度は少し遠いね
終わってしまうと不思議と何の違和感もなくわたしは
ひとつの光のように
なりたかっただけ
なんだって
知らない人には教えない
大切な秘密
教室に忘れてきてしまった光はすぐにちらばってわたしは
裂け目を探さなければならない


遅れてきたチャイム
どこにいけばいいのかなんてだれにもわからないって
先生がわたしに
内緒で教えてくれた
ふたりだけの秘密は
夢の続き
水の音 とぷん
夢の続きに とぷん


さよならしてる


自由詩 まごころを君に、 Copyright e.mei 2009-07-20 10:04:19
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