夏の魔法
未有花

夏休み前の教室で
ぼんやり先生の授業を聞いていた

教室の窓の外では
アブラゼミがうるさいくらいに鳴いていて
授業に集中できない僕の頭の中を
これでもかというほど占領していた

ジージー
いっこうに止む気配のない蝉の声
いつしか時間が止まったみたいに
僕のまわりは蝉の声で充満していた

ジージー ジジッ
突然蝉の声が止んだかと思うと
僕は目眩のような感覚におそわれて
その時何だかわかってしまったんだ

これは夏の魔法だ
アブラゼミがかけた特別な魔法なんだ

ふとまわりを見渡すと
何事もなかったかのように授業は続けられていて
気がつけば蝉の声も
またうるさいくらい鳴き始めていた

それにしても蝉の声が
前と違うように聞こえるのはなぜだろう
きっと僕が彼らの秘密を知ったからに違いない

アブラゼミがかけた魔法に
僕もかかったかどうかはわからないけれど
今年の夏休みは
いつもの年より特別なものになりそうな気がして
自然と笑みがこぼれた


自由詩 夏の魔法 Copyright 未有花 2009-07-15 12:43:37縦
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