好かれるひと
恋月 ぴの

どうやら苦手なものに好かれてしまうらしい

人前で話すのはいつまでたっても苦手なままなのに
旧友の結婚式でスピーチを頼まれてみたり
不得手解消と中途半端な意気込みで卒業した英文科の呪いなのか
難しすぎる専門書の翻訳まで押し付けられてしまい

夜景が綺麗だからと誘われたビヤガーデンでは
苦手な生ビールを飲まされて
結婚してる上司にねっとり口説かれ手を握られそうになった

生きてゆくって難しいよね

これは苦手かもと思えば近寄ってくるし
一途に片想いな先輩にはその他大勢としか見てもらえない
そんなに内気ってわけじゃないんだけどねえ
恥じらいなんて気にしない若い子たちが羨ましい

う〜ん、家に帰ったら久しぶりの西瓜でもいただこうかな

この歳になれば夏の陽射しは苦手だからと日傘くるりと回し
浜辺に寝そべって声かけられるの待っていたあの頃なんて思い出す






自由詩 好かれるひと Copyright 恋月 ぴの 2009-07-07 18:53:15縦
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