永遠を見極める眼球 2009
るるりら

 
   夏は他の季節よりも、死にちかいと
  たれかがおっしゃったのは天の声のようにも想え
  または蝉の声のようにも想え
  または緑陰をくれる梢の優しさのようにも想え
  私は夏を見極めようとしています
  
  広がる夏が
  銀色に照り返すヤツデの葉から
  私の額から
  私の肢体から
  植物の葉の裏から
  命持つもののすべてから
  沸き出でて その蒸散から生まれる雲を 
  臨終の蝉が乾ききる最後の最後に吐く息を 私は
 
  すべての生き物の蒸散は
  まったりと 全く動こうともしない あの雲を形成してゆく
  瞼の汗が眼球を浸し
  遠い夏のあの日、死んでいった無数の眼球も
  私も  あの雲と同じ色をしている 
  私は

その一部始終を見ようとしています
 
  
  
  緑と私と蝉と大気が
  一体となってゆく
  夏とは こういうことだったのかと
  私は またも忘れていたのです
  なんという わすれんぼう
  また その一部始終を見詰めよう

  夏は他の季節よりも、死にちかい
  それこそが正しかったのです
  だからこそ私は わざと忘れたのです
    
  夏は死なのです
  怖がってもよいのだよと
  夏がそう呟くのを待っていたのでありました
  いまだ ほら 夏を怖がってよいのだよ
  
夏が呟くのを 天の啓示を待つ殉教徒のように
  待っていたのでありました

  ああ
  私は怖い
  見極めることが





自由詩 永遠を見極める眼球 2009 Copyright るるりら 2009-07-05 12:40:20
notebook Home 戻る