明日の海 
服部 剛

若布わかめまばらに干し上がる 
六月の浜辺を振り返れば 
今迄歩いて来た僕の 
たどたどしい足跡が 
霞がかった岬の方まで 
延々と続いていた 

あの岬の幻は 
未来なのか、過去なのか・・・ 

浜辺に膝を抱えて坐り 
繰り返す波音の響きに包まれ 
今日という日の時さえも 
ぼやけて来る 

六月の曇天の下 
一面にざわめく鉛色の海 
独りのサーファーが危うい姿で 
両手を広げ 
板の上に、立っている 

遠くに聞こえる踏切の 
音が止み 
左右の 
長い棒が開くとそこは 

幻のサーフボードを抱えた人が 
透き通った門を潜り 
足を踏み入れる、無人の浜辺 

幾度、波間に溺れようとも 
板を掴んで、這い上がり 
両手を広げ 
波の上に立つ 
あの瞬間を、夢見る者の 

目の前に広がる
明日の海 








自由詩 明日の海  Copyright 服部 剛 2009-07-03 18:41:28
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