家族
たもつ

 
 
○父

窓から庭のブランコを
眺めることが多くなった
あれにはもう一生分乗った
と言って
時々体を揺らす
背中が
押されるところではなく
支えられるところとなってから久しい


○母

美味しいのは音でわかる、と
スイカをひとつひとつたたき
一番良い音がしたのを買っていく
後には粉々になったスイカが散乱し
甘い匂いとともに
短い夏は始まる



○兄

深夜、起きだして
大好きな人のために
ひとり
腕立て伏せをする



○僕

これでも昔はもてたんだぞ
と自慢したりするけれど
今でも満員電車が苦手で
人に足があると踏んでしまう
蟻などは
必要以上に潰さなくなった



○弟

外野フライを
どこまでも追いかけたまま
春の河川敷から帰ってこないので
未だに図書館から
「宇宙戦争」の返却依頼がある



○妻

名付け親でもないのに
一番僕の名前を知っている人
そして僕が
決して名前を忘れない人
あなたを知らない人生より
あなたを知っている人生の方が
ほんの少し長くなった



○家族

世界で一番小さい、さびしさの単位



○娘

鳥にいじめられて
部屋の隅っこで丸くなってる
それでも絵を描くときは
鳥のための
青い空を忘れない




自由詩 家族 Copyright たもつ 2009-07-03 17:46:21
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