深海魚
shu

オレの胸の奥底に深海魚が眠っている
時折目を覚まし尾ひれを影のように揺らす
鬼灯を口に含んだように頬をふくらませて

きゅっきゅっ 
と小さく鳴く

月を見る猫の目のような
深くもなく浅くもなく
悲しくもなくうれしくもなく
闇を溶かして固めた黒曜石のような瞳で
湧いては消える記憶の泡を眺めては
頬を鳴らして底の砂に身を沈め再び眠る

おまえどっからきた
いつまでいるんだ
おい
オレは金魚鉢じゃねえぞ


深海魚は決してあがっては来ない
だって死んぢまうから

今日も奴の尾ひれが
オレも知らない奥底の
記憶を揺らす戯れの泡のなかで
ひらひら揺れている








自由詩 深海魚 Copyright shu 2009-06-24 01:13:37
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