銀の鱗
あおば

                      090622



銀ヤンマを食べる
鬼ヤンマを睨む
怖い顔をした男が
車に跳ねられて
怪我をして
病院に運ばれた
怖いから
跳ねられたのか
車が悪いのか
よく分からないままに
記憶から抜けた

銀ヤンマの複眼が睨む
水たまりの隅で
なにかが蠢いている
今のうちに逃げろと
声を掛けたが
人ではないから
分からなかったようで
銀ヤンマのヤゴに食われた
私の不注意なために
だいじなお子さんを守ることが出来ませんでした
水たまりに深々と最敬礼して涙をこぼす
演技が上手くなったと褒めてくれたのは
腹の中の銀ヤンマだけで
鬼ヤンマは端から相手にしてくれない
悠々と空を飛びまわり
近くに来ることもない


自由詩 銀の鱗 Copyright あおば 2009-06-23 00:05:23
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