とかげ
銀猫


うすい水の膜を通して
いちにちの過ぎるのを待つ
泳ぐに泳げない、
不器用な蜥蜴の成れの果ては
にんげんに良く似ているらしい


わたしは髪を切る
意地の悪い快感をもって
不運の絡んだ毛先を切り落とす
背中はすうっと軽くなり
背後に捨てた茶褐色が
ひくひくと打ち震えている
風が冷たい首筋も
明日には慣れてしまうだろうが
きっと不幸のくちばしは
そこに留まり
わたしの行方を追えないはずだ
窮地を逃げ去る、
髪を切る

銀のはさみで
再び伸びた尻尾を
さくり、
切ってしまえば
いくらかずつ厄介は離れてゆくのだろ?


切ってやる
切ってやる
わたしはいつでも蜥蜴になって
尻尾を掴まれるその日まで

(今日も青い朝顔が見張っている)





自由詩 とかげ Copyright 銀猫 2009-06-22 18:23:18縦
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