夜のベランダ、マスターベーション
とんぼ

隣の部屋のカップルは
毎晩遅くまで話をしている
笑い声がわたしのベットまで聞こえていて 眠れない
わたしは耳をすます

彼らがセックスをするとき
わたしは自分の恥部に手を当てて
そこから何も生まれないことと
そこで何も死んでいないことを確認する

今日、恋人の首にあった誰かのキスマーク
そこが出発点
かわいい人
くちびるはそこからどこへ向かったの

そうして彼のあえぎ声がわたしを殺す

自分のくちびるに手を当てる
顔の中でそこだけが熱い
冷えた右手でふれるとすぐにぬるくなる
わたしの中にある優しさを全部足したくらいの熱さになる
わたしのくちびるは何も産まない何も殺さない

遠くなれ遠くなれ 声


自由詩 夜のベランダ、マスターベーション Copyright とんぼ 2009-06-18 22:18:34
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