ほんとうのパンツ
あおば

              090616



素敵な顔した
船乗りシンドバッドに憧れた
七つの海に乗り出して
大金持ちになりたいと
おとぎ話に夢中になった
地道な稼業に精を出せと
父親は口を尖らせる
光源氏の末裔ではないとも付け加え
指物師を生業に
市井で漁ってきた
おまえもそうなるのだ
それがいいのだと
バカボンのパパのように
少しだけくどい調子で
訴えかける
うざいなぁ
げろげろした
オリーブオイルを垂らしたサラダを召し上がれとか
パスタの上手な茹で方とか
須恵器よりも丈夫な
テラコッタの水差しとか
キタキツネの缶詰
ににんがし
なんでもよいけど
好きなことをしたらどうと
幼い頃から
好きなことを貫いた伯母が
口を挟む
父の姉だから
遠慮がなくて
いまでも若い顔の
怖いもの無しの伯母さんは
口も八丁手も八丁
阿修羅のような
しなやかな手を伸ばし
焼きたての
クッキーを鷲づかみする






「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、こはしいづみさん。


自由詩 ほんとうのパンツ Copyright あおば 2009-06-16 02:52:27
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