僕と、お昼を。
虹村 凌

誰かが言った
「我慢するんだ」
僕は叫ぶ
「我慢するよ」

アルバイトの説明会場の中に充満した
お金お金お金
生活生活生活
毎日毎日毎日
その空気に軽い吐き気を覚えながら
全てを終えて
会場の外で煙草に火をつける

誰かが言った
「我慢するんだ」
僕は叫ぶ
「我慢できない」

相変わらず子供っぽいという自覚はあるけれど
普通普通普通
未来未来未来
病気病気病気
全てを一言で片付けられると
その逆を言いたくて
黙って通り過ぎた後で呟く

誰かが言った
「我慢するんだ」
僕は叫ぶ
「我慢してるよ」

電車の中で見る人人人
駅構内や改札ですれ違う人人人
街の中で肩がぶつかる程の距離にいる人人人
今日明日明後日
誰かが死ぬかも知れないし誰かが殺すかも知れない
今日も今日とて4000人が生まれて4000人が死ぬ
死ぬ死ぬ死ぬ
あまりにも無造作にそこに転がるそいつが
どこを見ているかわからない目つきで
そうか
そいつと目が合うと死ぬって事か
だからみんなどこを見ているのかわからない目つきで

誰かが言った
「我慢するんだ」
僕は叫ぶ
「我慢できない」

痛いだとか苦しいだとかがもうそこら中に溢れかえって
その事にも麻痺っしちまって気付けないでいる
挙句の果てに全部は闇の中に押し込められて
それだけでみんな頷いて
忘れていく
忘れていく
忘れていく
忘れて
行く

誰かが言った
「我慢するんだ」
俺は叫ぶ
「我慢できない」

冗談じゃねぇ
全てが光だったり闇だったりしてたまるかよ


自由詩 僕と、お昼を。 Copyright 虹村 凌 2009-06-04 22:30:28
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