黎明
嘉村奈緒



 
何かにすがりたいし
君に逢いに行きたい
これ以上ないくらい丸まって眠って
透き通ったものと
いい匂いのするものと
温かいものを少しずつくっつけたりして
昏鐘が呪文のように聞こえるから
きっとうまくいく
夜だって出し抜けるよ

例えば輝かしい純情に打ちぬかれたり
女の子が柔らかすぎて困ることなどないのだから
安心して日を過ごす
ときどき祈ったりもする
圧倒的なハッピーエンドや
真っ直ぐに進むことは
たまにじゃなくて
いつだって怖い
ぐるりと呑みこまれないように
指を折って光を数える
夜に眠る

浮ついたままでいると
輪郭がぼやけてしまう
光だって怖いよ
でも嬌声にぶち当たれば笑えるし
小さな彼が綺麗に回転すればきゃあって思えるし
そういう他愛無い何かに
すがってもいいと思う
白い靴を履いて
君に逢いに行ったっていいんだ
やれることや
大事なものは多くはないけれど
うまくいくよ

それはもうすぐだから
瞬きみたいに
君が目を閉じて
開けて
そうすれば
嘘みたいに夜は遠いって
君に言うから




 


自由詩 黎明 Copyright 嘉村奈緒 2009-05-30 22:35:38
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