羽化するうたげ
あすくれかおす




羽生さんが氏名を説明するたびにやさしい口調で羽が生まれる


初夏がきてみかがみのような水田の空にむかって落ちてゆく羽


ケチャップの湖沼に沈める手羽先をお箸でさくのが彼女の普通


パピヨンと名付けた子犬が羽ばたいてドラッグストアのちらしくわえる


「ろーるすろいすかーるるいすすいすろーる言えたよパパ!羽をちょうだい!」


開戦の挨拶代わりに一匹の天使が地上に落とす火の羽


「羽のなかにはカタカナのンが二つ入ってるから2回の負けよ!」


鳥類の世界タイトルマッチします挑戦者側の羽送ります


女子は保健室に男子は羽をもちいますぐグランドにきなさい


まじないに必要な羽を探してます新宿西口駅の前です


羽と尾とどちらが望みか問う神のいない今朝にはウォーキングする


満タンのガソリンタンクの給油口に付着している羽の休息


ミトンがいい?それともミント?なんつって羽を拡げてしゃべる新妻


羽をありがとう。フェザー級にダチョウも入れていい?返事ください


慎ましくいたいけな羽を苗床に萌える緑に涙する昼


羽がほら生え変わるたびに友だちのRSSがフィードされてる


成田なら立ち止まるような未練でも羽田ならむしろ追い返すかも


うつむいて羽をゆすいで泣く夜のティンカーベルが鳴らす着メロ








短歌 羽化するうたげ Copyright あすくれかおす 2009-05-19 21:49:36
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