川縁の風
渡邉建志

 
わたしの家の近くに加茂川という名の川がある
川べりはきれいな遊歩道になっていて
朝はきもちのいいミルク色のもやがかかる
わたしと子供はその中を自転車ではしっていくのがすきだ
わたしは愛車「流星号」に乗って
眺めのいい川上にむかってさかさか走るのがすきだ
子供はわたしの後ろにたって
全身で風を感じるのがすきだ

そらがあおい
ぼくはあおといってみる
あ、というと、せかいが上にむかって行って
お、っていうと、せかいが上でひろがって、
あお、あお、あおって、ひびきわたるみたいな気がする

太陽がにこにこと照っていて
わたしも子供もいい気分
今日はなにをつくろうかなとかんがえる
こんな日はまずねぎだ、
ねぎは外せない
かごにいっぱいねぎを入れて
この道を帰って来るのだ

シャワーみたいにあめがふってきた
そらはあおいのにあめがふるから
とても気持ちがいい
あめっていってみる
あめ、あめ、あめ、
むかしむかしそのむかし
みんなが田んぼをたがやしていたころ、
みこたちが天にむかって
あめをふらせてくださいと
いのったそうだ
あめって、きっとあめからくるから
あめっていうんだ
天からのプレゼントなんだ

あら、狐の嫁入りとわたしは思わず呟いた
今日はどんな良いことがあるんだろう
きっとねぎが安いとか
ねぎに花がさいているとか
いやぁまさか、そんなことは無いよね、と
わたしはひとりでにやりとする

そらはほほえんでいるのに
なみだをながしているのはどうしてだろうと思って、
天のだれかがきっと
ほほえみながら泣いてるからだと気が付いた
きつねかな
きっときつねのおよめのお父さんが
うれしくて、うれしくて、
ないてるんだ、きっとそうだ、
ぼくのけっこんしきにも
お父さんはないてくれるかな?

雨が降ってきたので私はスピードをあげる
飛べ、流星号

川上にはきれいに桜の木が並び、
その上の空は澄み切っていて、
その下に北山連峰が青々と左右に広がっている
その山の向こうには
美山―みやま―町という美しい名前の町がある
山に囲まれた美しいせせらぎの名前は
美山川、だったっけ?

わたしはさかさかと流星号をこぎつづける
子供はわたしの後ろでりょうてをひろげて
かぜをかんじている
 
 


自由詩 川縁の風 Copyright 渡邉建志 2004-08-30 02:36:16
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