波紋のように広がっていく
いとう


汗ばむほどの陽光の
照り返しに遮られて
わたしはまた
前が見えない
夜のうちに拾った
指たちをつなげても
それは手にならないのだ

誰かの声の届く範囲に
いるはずなのだが
それなのにいつも
何も聴こえない
ような気がして
前ではなく
上を見上げると
空には鳥たちもいない

目をつむり
その場に佇むと
ようやく誰かの声が聞こえる
ような気がするが
それは錯覚で
やはり何も聴こえない
ような気もして
思わず目を開け
見渡すと
誰もが目をつむり
その場に佇んでいて
そのさらに遠くでは
誰かが
空を見上げようとしている


自由詩 波紋のように広がっていく Copyright いとう 2009-05-16 13:12:13
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