トマトジュース
銀猫

目覚めのひと呼吸が
かなしかった日は
ふい、と
砂漠に連れて行かれるようだ


そこは盛り上がった砂地/育ちかけたトマト/の/墓標が整列/黄色い花が手向けられている/生ぬるい南風が/背中/を突つく/急かされる/左足/初夏のサンダル/小指が破れる/時折/人魚姫の痛みが走る


くろい尾びれを残したまま
ひとまわり小さくなったわたしは
歩幅をまた縮めて
(すこし前へ)
海だった場所は
とっくに消えているだろう
(すこし前へ)


きらめく鱗/いちまいずつ剥がれ/うぶ毛の葉/掠めて/舞い落ちる/これがかなしみの正体ではない/それを知っている/トマトの墓標が続く/続くのだ


尾びれにまだ
血が滲んでいる



自由詩 トマトジュース Copyright 銀猫 2009-05-14 21:48:21
notebook Home 戻る