こういうそこ
佐々木妖精

森を眺めるようにビルをたどる
窓から窓へ目を移し
切り貼られた深さと切り抜かれた感触を行き来する
昨日この先で見つけた
あの場所は今日も見えるのだろうか
高さを計るように 首を真上へもたげることで
ビルは深く消えゆき 見たいものしか見えなくなる
眼の中へ飛び込むものは空しかなく はみ出すものは鳥しかない
大量の鳥 鳥の合間に翼があり 翼の隙間に羽根があり 羽根の上に空がある
空の隙間にあるあの場所は 僕には果てしなく遠く思えて


かつて人々はこぞって高みを目指し
理想を手に 野望を胸に秘め 希望を塗り固め
競い合い夢を積み上げた
ソレンはウサギの目を赤く染め
人民はいまだ餅の配給を待ち長蛇の列
あの頃は大変だったよね けどいい時代だったなんて
UFOは天使の着ぐるみを脱ぎ捨て
ワレワレハウチュウジンデスと声を揃える
金属的な皮膚から一様に輪っかがはみ出し浮遊している
手を差し込み空間を探っても 針金のようなものはない
ここはどこですかと踵を浮かせ ツルツル頭(?)を起伏に沿い撫で呟く
どこということはないのですが、どこというひとはいるんですねと微笑む
まるで宇宙人ワレワレモ宇宙人そう声を揃え
スターリンヨシフスターリン あ、レニングラード

三日月状の縁はニヤニヤと生臭く クレーターのおうとつが指を噛む
いつまでこうしていれば見えますか
僕は感触しか知りません
望遠レンズも青空がこんなふうに塞ぎ込みます
そう深さの足りない目張りです
夜空になったら見えますか 惑星衛星恒星
どれもこれも眩しくて ここが月だという確証が持てないんです


自由詩 こういうそこ Copyright 佐々木妖精 2009-04-28 00:40:46
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