マッドビースト


 帰宅ラッシュの車両
 油っぽい空気の中
 違う体が欲しいって思う

 座席には
 よれよれの背広に
 薄くなった頭を並べて
 眉間にしわを寄せて目をつぶっている
 サラリーマン達

 きっと生まれかわる夢をみてる

 
 純白のまっさらな体
 悩みを置いて飛んでいける翼
 疲れない四肢

 僕らにはこの指しかない
 いつも触れなければいいものばかりに触れてしまう指
 痛みでさえも何度も撫でて 
 確かめるように傷ついていく
 
 もうどうしようもない歴史
 
 
 鳥は飛び続ければ宇宙にいけると思っているかも
 花は咲き続ければ誰か見つけてくれると思っているかも
 獣は食べ続ければ死ぬことはないと思っているかも
 僕らは撫でつづければ刺も愛してくれると思っているかも
 

 僕らにはこの指しかない
 不安定なものばかりの輪郭を確かめたがる指
 違う体が欲しいから抱き合うのだろうか
 君の輪郭をたどるだけの指
 


未詩・独白Copyright マッドビースト 2004-08-28 00:18:59
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