すべて取り違えてみた声と体 水町綜助さん
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このぼんやりとした読後感が妙に心地よくて、おもしろい詩でした。タイトルからも
う、内容をそのまま鵜呑みにしていいのかまよってしまうのだけれど、そういう翻弄され
ることがけっして不快ではないラインでふみとどまっているあたりが、水町さんのたくみ
なところだとおもう。
なんとはなしに、ふとあのときのことを思い出したりとか、わけもなくだれかの顔が浮
かんでくるとか、日々を生きていくなかでたまに遭遇するあのぼんやりとした感覚によく
似ています。思考をなぞると、こんなかたちになるのではないか。とおもわれるような詩
で、なつかしいような不思議な気持ちになりました。
やわらかで丁寧な語り口がこのうすぼんやりとした印象のひとつをかたちづくっている
ようにおもいますが「あすの朝をまちな」で、どきりとさせられる。緩急や強弱をさらり
と忍ばせるあたり、見事だなとおもった。ほかにも「ぼた 音もなく土煙」付近での反
復、「*」によるシーン変更など、ありがちなんだけれども実は高度なわざなんじゃない
かというものを織り交ぜてあって、すごいぞと感じました。
フレーズでは「その午後は全てでっち上げの15:30でした」のところ。それまでの
ひかえめな可笑しさが、すきっと上品なかっこよさでおさまってしまう一文だとおもう。
それと「ヤマカガシは咬む蛇だった… 毒も飛ばす…なんてことだ…」の2行は本文と、
はなれた場所にあって、それがまんがのふきだしのようで新しく、ぐっときました。