4/21の記憶装置
夏嶋 真子





買いものの途中
「ちょっと 待ってて」 と
ふいキミはどこかへ


子犬みたいな笑顔が
走って もどってくる
その手には
青いリボンをかけた小さな箱



       
唐突なキミからのプレゼント
今でも大切に持ってる


バカみたいにいつも一緒だったよね
人生の1/5はお互いでうまってたよね


とおくとおく離れすぎて
ふりかえると 
ぽっかり広がった
明るい空白が見えるよ



不思議だね 
あんなに大好きだった気持ちも
あんなにつらかった別れも
あんなに後悔した気持ちも


心の中を探しまわったのに
どこにもないんだ


薄れて消えかけていく
キミへのすべての感情のかわりに
なつかしさが
ひたひたと
すみずみをみたしていく


この喪失は幸福と同義




4/21が来るたびに
あのときキミにもらった
オルゴールを鳴らす


コレは記憶の再生装置
キミのことを思い出すための
一年に一度の数十秒は
あまりに短くて


リピート 
もう一度だけ
ねじをまく


こぼれた音に
シナプスが接続されて
短い映像がにじんでる


あれはまだ知り合ったばかりの頃
わたしはキミに聞いたよね


「・・・いつ?」
「4/21」
「わたし 記憶力いいから きっと ずっと覚えてるね」


ドの音で途切れた記憶



わたしの言葉
嘘じゃなかったよ
たぶん これからもずっとね


 
届かない言葉に意味はあるのかな
その答え わかりかけてる



届かないキミへ
この幸福をともにしているキミへ




誕生日おめでとう






携帯写真+詩 4/21の記憶装置 Copyright 夏嶋 真子 2009-04-21 19:09:01
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