エイトビート
風見鶏
高校三年のある夏の日の昼下がり。
あの日、僕は最高のロックンロールに出会ったのだと今でも信じて疑わない。
鋼鉄のミサイルに乗り込んで、流れるような景色の中で、色々なものを見つけてきた。
見た事も無い土地に足を運んだりもしたし、出会うはずの無い人とも知り合った。
宇宙旅行のおみやげに持ってきた月の欠片を眺めながらそんな事を思い出す。
1985年に切り出された生身の岩石はミサイルとしての長い宇宙旅行を終えて、
今は鋼の軟体動物としてよろしくやっているようだ。
もう自分があの熱狂の中に入る事は無いかもしれないけれども。
それでもやはり少し安心するのだ。
変わらぬものなどありはしないけれど、
あの日感じた衝動だけは本物だったと信じる事ができるから。
自由詩
エイトビート
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風見鶏
2009-04-15 15:06:38