花の森にて
未有花

やわらかに色紙の花園で
子猫が蝶々を追って駆けて行く
淡紅色ときいろの薫りを放つ花たちは
自慢の花びらを踊らせることにいそがしく
まるでそれは雨のように降りしきり
この花園を埋め尽くそうとするかのように
花びらは散る また降り注ぐ

小手毬の花影から聞こえるのは
やさしい音色のパストラーレ
あれは姉さまの弾くハープシコード
夢のように私の心に舞い降りて
昼下がりの眠りを静かにいざな

花海棠の根元でうとうとしていると
赤い花が私を起こしてくれた
それは葉陰にひっそりと咲く草木瓜の花
首をちょこんと傾げるように
身をこごめて私をみつめていた

何て平和な時であろうか
連翹の空の上雲は静かに流れて行き
見渡せば春の吐息であふれている
色とりどりの花の雨 花吹雪の中
私はまるで迷子のように
ただひとりきり花の森にたたずんでいた


自由詩 花の森にて Copyright 未有花 2009-04-13 13:05:19
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