裏町影
石川和広

親を恨んでいるのは、わたしですか
モノローグ

あんたであるということを、認めれば楽になれると
京都の裏町の、将棋うちのおやじはいう。
へんだな、その歩の動き、そう歩くこと
進めないのだって、確かなことなんだ

暗い軒下
静かな明かりが蝋燭であることが
ちらちら揺れることが
風に私と共に、ともに触れている。

病めること

止めること

出来がたい状況
梶井基次郎だって裏町影に追われていたんだぜ
石畳を濡れた中を走るしかないじゃないか
憑かれた者は
肩を見知らぬ男にぶつけ
それすら孤独の碁盤の目には
ひとつの温もりだ


ある日空は絢爛たる城を
隠していると思ったら、ラピュタの城が
スクリーンに在ったじゃないか

在ったじゃないか
あれを追いかけてなんになると
作者には云いたかった
地にへばりついて
え諦めきれぬ日々を
はっきりさせていくしかないんやで
もう
緻密に城を空に描きあげても
刹那の嵐には耐えられないし

第一、映画館を出て街を歩いて
まあ、しゃべってみて、梅田歩いて帰って
楽しいよ
覚えているよ
それで?

僕はもうここでいつづけることに、
かんきょうをかえてゆくこと
文句たれて、頭が渦巻くことに耐えられない

しかし、ここにしばられて
逃げていくことに罪悪を覚える
逃げてもいいのに
ここに足が、巻き付く植物が僕を地へと呼ぶ

どうするか
見当違いの誰かに、反吐をぶちまけて
人類の濁流に飲まれるとしても
それがいいとしても
今の私の混乱は
脳の異常でも
何か
惑星のかけら
あるいは
水滴におもえるんだ 天井の模様を見ると

外では、朝が青白く、正しく始まる
三条の宿屋のお上が
顔を腫らしながらも
近くの人に
挨拶をして

ゴミ袋をまとめている
風はいる小道





自由詩 裏町影 Copyright 石川和広 2004-08-25 02:59:17
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