下戸
茶釜

私は酒が飲めない
飲めないから酒に酔ったことが無い
酔ってくだを巻いたことが無い
だから酔わずに文句を言う他ない
だがほとんどが
酔わずには言えない文句ばかりだ
私はあきらめる
それでも出てくる少しばかりの愚痴を吐いて
だが人は
その僅かな言葉でも
しらふで言うと怪訝な顔をする

私は酒を飲まない
飲まないから酒に酔ったことが無い
酔って気が済むまで泣きはらした事が無い
だから酔わずに泣くしかない
だが誰だって人前では泣きたくない
私はあきらめる
それでも出て来る少しばかりの涙を零して
だが人は
その幾粒かの涙でも
男の癖にと笑う


私は酒が飲めない
飲めないから酒のせいに出来ない
ちゃんとした意識の中で
はっきりとした罪悪感の中で
酔った人のしでかす少しばかりの罪と
酔っていない自分の罪の全てを受け入れなくてはならない

あらゆる傷の痛みを
そのままに感じなければならない

だが酔っていないからこそ
感じられる味わいもある


自由詩 下戸 Copyright 茶釜 2009-04-03 20:23:14縦
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