アオゾラ・マシュー
虹村 凌

マシューは笑いながら何かを喋っている
どうせラリってんだ
そりゃ学校もクビになるさ

抜けるような青空が広がっている
学校をサボるのは昨日から決めてたけど
こんなにも天気がいいのなら
どこかへ行こうかなんて考えてしまう
行きたい所なんて無いけど
何時もそうなんだ
天気がいいと何処かに行きたくなるけど
別に行きたい場所なんて何処にも無い
その移動している時間を楽しみたいだけで
行った先でどうとかは無くて

マシューは笑いながら冗談を言うけれど
何時もスベってるんだ
そりゃあ誰にも相手されねぇよ

天気がいいからって外に出なきゃいけない訳じゃない
アニメ見てようがゲームしてようが俺の勝手だろう
でも今日は天気がいいから外に出ようかと思うんだ
行きたい場所も何も無いけど
何時もそうなんだ
何処かに行こうと思っても行きたい場所なんて無い
それはこの街に限った事じゃなくて
何処にいたって同じなんだ

マシューは学校をやめてスーパーでカートを押している
きっと今でも同僚に煙草を貰って吸ってるんだろう

連れだして欲しいのとも何か違う
どこかに行きたいのは間違いない
でもどこに行きたいのかがわからない
海とか山とか河とかそういうんじゃない
誰かの部屋でも雀荘でもゲーセンでもない
どこか遠くもなく近くもない
そんなところへ
そうやっていつも陽が暮れていくのを見ている
窓の外はこんなにも綺麗な青空が広がってるのに
窓の外に出るのはこんなにも難しい

マシューとは友達でも何でもない


自由詩 アオゾラ・マシュー Copyright 虹村 凌 2009-04-03 00:29:26
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