さんか
佐々木妖精

信じることから始めるつもりが
疑わないことに気を取られ
信じることで救われるつもりが
疑わないことに疲れている
もうダメだ もうダメだと嘆くうちに
まだダメか まだダメかと唱えるようになった
もしかしたらとかひょっとしてとか万が一と盛り上げ
見覚えのあるビルや 目印だらけの曲がり角へ
ぶつかるだけぶつかり日が暮れる
うつぶせになれば見えるんじゃないかと地平線を覗き
日差しの裏で目が覚めると
もうレジのことしか考えられない

詩集でも読むつもりが
めくることなく裏返し 
バーコードばかり読んでいます
詩でも書くつもりが
POPばかり書いてます
コアラのマーチは最近売れないとか
パンダのマーチならまだ売れたはず
などと論じながら
誰よりも早く ただ速く
スピードの向こう側というやつを見据え
打ち続けることでもう
レジのことしか考えられない

家族とは長いこと メールでしか会っていません
声を出すと 隠しきれませんし
どんなに心配されたところで
父さんごめんと漏らす傍ら
七三分けのバーコードを読み込みたいなんて
レジのことしか考えられないので

ボジョレー解禁しました
と 客のいないフロアで叫んだ夜
新しい彼女でも作れって 世話焼きの店長にはたかれましたし
それも命令ならば従いたいところですが 気の迷いです
そんな余力はありませんし
何よりも今は 部屋で寝かせたワイン片手に
コンビニプレイしか考えられない

休日は寝てばかり居ますが
寝るために生まれたわけではないと
生まれる条件を選べなかった者の一人として呟くのは
誤りでしょうか
ただ生きるぐらいなら 追うのをやめるぐらいなら
一刻もはやく 
                     レジを打ちたい
というのは 遥かにマシな生き方です
だって今はもう レジのことしか


自由詩 さんか Copyright 佐々木妖精 2009-03-09 21:47:23
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