アース・ティアー
マッドビースト


 遠くで
 閉じられたままの
 あおい
 まぶた
 
 その方角から
 滾滾と
 海はわいている
 波はよせている

 まぶたが僕に見せようとしない
 その向こうの景色は
 別の国の海岸の
 豪雨に耐える灰色の街だろうか
 
 嵐の中で沈みそうな
 銀色の客船だろうか

 それならいいけど


 砂浜を走り回る
 こどもの笑い声
 はじめて海を見る
 こどもの泣き声が
 透明に満ちている
 
 僕のこどものころの記憶では
 あの伏せられたままのまぶたと同じ
 寄せる涙もまた
 あおかったのに

 今日は
 緑っぽくて茶色っぽくて
 波打ち際で
 泡だっている
 この海に


 このこたちが
 海の絵を描くのに
 無邪気に
 茶色のクレヨンを選びとる日がくるのかもしれない

 星の涙の色を変えてしまった僕らの体は
 もうこの海には溶けないかもしれないけれど
 拒まれても
 流れ着く場所は他にはないのだ 
 
 自分の涙なんていつでも拭えると思う

 まぶたが僕に見せようとしない
 その向こうの景色はきっと
 向こう岸に立つ別の僕
   
 目を凝らして水平線を見つめるほど
 口の奥が苦く
 掌は熱い


自由詩 アース・ティアー Copyright マッドビースト 2004-08-21 01:20:48
notebook Home 戻る  過去 未来