motodori
れつら

みじかく切れてしまった糸を
玉結びするみたいに
ほつれた布を縫い合わすのは
むずかしいことだね
夜のあいだじゅう意識を失わずに
きみを待ち続けられればいいのに

グラスでは焼けた酒が溶けて
ひとりでに回りだす
かきかけた手紙を丸める
インクが切れたのか
文字はてんてんとして

耳たぶが赤くほどけるときには
昔のことは思い出さぬように
これから、電話するから
それだけでよしとしてね
強張った頬を腫らして笑ってたら
つめたい右手で冷やしてあげる
虫歯の痛みみたいな思い出は
甘いチョコレートを溶かして飲み込んでしまおう

そしてふたり昔みたいに
のらりくらりまぶた落として、もとどおり




自由詩 motodori Copyright れつら 2009-02-21 03:09:15
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