はじ
佐々木妖精

太陽から差し伸べられた手が
エスカレーターに見えたのですよ
自発的に?よじ登る腹も突き落とされるべき背も空洞です
ならば私は何によってそうするのかされる以外楽になれる場所などないというのに
あなたの目にはカメラが仕込まれています
あなたの口は壁にあるのでしょう
でなければ背中から 異次元の人などと聞こえはしません


隅っこの住人は
別次元という殻から産まれた
産声に草原が化膿し
這い回る先に
焼けた砂利が敷き詰められる
脚を上げ
息を潜め
熱を帯び 波打つものに耐えさえすれば
聞こえるはずだ
素足の軋む音
壁と話す声
肩でする息

絶滅を危惧されるその子は
口元が弾く音で縫い針にまみれ
致死量のナイフを飲み
この子だけはどうかた―
祈らなくてすむ希望に縛られ
縛られることでこうして
誰の手首も傷つかないなら

絆創膏が太陽を覆い
重々しく揺れるガーゼが
腫れた動脈を包んでいく
埋め立てていくものを手に
隅っこめがけて投げつけるも
放物線の先は

ああ 真ん中がはじまる


自由詩 はじ Copyright 佐々木妖精 2009-02-14 23:35:51
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