Davidへの伝言
いとう


私たちはいつも
ささやかなものを守ろうとして消えていく
それが私たちであって
それ以外の私たちはいない

私たちは確かに
生きていないまま生きなければならなくて
そして躓いたまま死んでゆくのだけれど
その呪いを受けたままでしか生きられないのが
確かに私たちなのだ

David.
私たちは受け入れるしか術がない
それは運命と呼ばれるものではなく
もしかしたら呪いでもないのかもしれない
私たち全員が呪われているので
誰も呪われていることに気づかないどころか
呪いというものがあることさえ知らないのだから

だからDavid.
受け入れることで消滅する何かがある
受け入れることで名付けられなくなる何かがあり
Davidあなたですら
私たちがあなたを受け入れた途端に
David
あなたも消えてなくなる
確かにそれは
受け入れることしかできない結果に過ぎないし
私たちにはそれ以外何もできないのだけれど

もう一度聞いて欲しい。
私たちはいつも
ささやかなものを守ろうとして消えていく
それが私たちであって
それ以外の私たちはいない
ささやかなものが何かは関係ない
守れるかどうかも関係ない
守ろうとする意思と
消えていく覚悟と
それだけが私たちに残るものなのだから


私たちの廃墟はいつも
眩しさと暗闇の境界を作り出し
その曖昧な空間を
私たちは慈しむ
影絵のようなシルエットはいらない
くっきりとした境は
必要ない
私たちは暗い穴の中に潜んで
曖昧なまま
すべてを受け入れようとする
David.
私たちにはそれしか術がないのだから
私たちにはそれしかできないのだから



自由詩 Davidへの伝言 Copyright いとう 2009-02-09 14:56:11
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