ふゆの背中
銀猫

オリオンが
その名前を残して隠れ
朝は針のような空気で
小鳥の声を迎えうつ
わたしは
昨日と今日の境目にいるらしく
まだ影が無い

太古より繰り返す冬の日
あたたかい巣箱から
掴み出される予感が
背中を震わせる
(朝はまだすこし遠くにいる)
車両基地に並んだ列車が
轍を軋ませ
仄暗い街の中へ
悲鳴を放つ
この凍える次元の
希望はどこに隠れている?

かろうじて
温もっている獣の背中に
或いは
さっき抜け出した毛布の中に
見落としてしまったろうか

星の名前より、水
暁いろより、風
靴音の気配
そういうものの中にだけ
蹲っているのかもしれない

わたしの影は
まだ無い





自由詩 ふゆの背中 Copyright 銀猫 2009-01-04 06:01:34
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