サマセット・シケイド
マッドビースト

 
 
 生まれる毎にこの季節を選び
 その度にこの季節を悲しむあなた

 全ての死を悲しんでしまうやさしいあなた
 その広げすぎた両手には抱えきれない数の迷いがやってくるかもしれない
 抱えきれずに自分も迷いになるのなら
 腕を閉じて大切なひとだけ抱きしめているほうが間違っていない
 あるいは自分の顔を覆っているだけでもいいはず
 なにも見ないでいて
 見れば手を差し伸べずにいられないのなら
 手を差し伸べない自分を嫌わずにいられないのなら

 誰にでも咲くことのできない不器用なあなた
 ひまわりにはなれないから
 泣いているだけでもいい
 疑うことはしないで
 振り返ることも
 無垢な悲しみに泣いている声はきっと
 赤ん坊のように澄んでいるはず

 朝がくれば泣いている
 あなたの声はきっと疎ましいけど
 あなたの居ない目覚めは
 ひとりの眠りより私を失望させる

 ひまわりにはならないで
 時期がくれば汚れてしまうから
 泣きつづけていて
 命を削るあなたの声を私は聴いているから
 あなたが絶えるときには私が土に埋めてあげるから
 
 すこし眠っていて
 悲しみを土に捨てて
 また次の夏に 殻を脱いで起き上がってきて
 


自由詩 サマセット・シケイド Copyright マッドビースト 2003-09-18 00:59:11
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