虹色のマフラー
リーフレイン

駅のホームでマフラーをほどきました。
きつくひっぱって、ピンと伸びた毛糸が 指から指へ。 
一本の毛糸のレールがするするとのびていって地球を一周します。

「メーデー・メーデー ガラス細工の雲が地上に降り注ぐでしょう。」
バージン・アンゴラウール &アンゴラマーク入り
虹色に染まった 雲は 泣き出しそうな指先です。

「メリーさんの羊、羊、羊 メリーさんの羊、かわいいな」
アンゴラ地方の山の上に棲んでいるアンゴラ羊のアーシャは、
泣きながら自分の毛を刈り取って、
泣きながら自分の毛を洗って、
泣きながら漉いて、
泣きながら紡いで、
ずっとためていた自分の涙で糸を染めました。
アンゴラ地方に住む羊たちは、そうやって毛糸を売って暮らしています。

あなたは、まっすぐでピカピカに光っていて、どこまでもどこまでもどこまでも続いています。
くるくる回転するあなたの体には鋭い群青色の声がつきささっていました。
マフラーをまきませんか?群青色の声を包み込んで痛くないように。メリーさんの祝福を。

「メリーさんの羊 ひつじ ひつじ」
だけどメリーさんは魔法使いだったのです。だから、ほどいて もう一度地球を一周します。
「メーデー・メーデー 虹色のふわふわ雲。」

だんだんゆっくり ていねいに、まきなおしていく毛糸の玉がまあるく 
ふんわりと ふんわりと、まあるく まあるく ゆっくりと、
虹色のふわふわが ふわふわ玉になったころに、

ほうっと 毛糸が浮かびました。

「さようなら、メリーさん。 さようならアーシャ。」



自由詩 虹色のマフラー Copyright リーフレイン 2008-12-20 19:39:53
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