ブドウムシ(百蟲譜44)
佐々宝砂

山ブドウのつたに
寄生しているから
ブドウムシと呼ぶ。
冴えないちっぽけな芋虫。

それがどんな成虫になるか
私は知らない。
たぶん冴えないちっぽけな蛾か蜂に
なるんだろうと思う。

だがこの冴えないちっぽけな虫は
びっくりするほど高値で売られる。
渓流魚がこの虫を好むからだ。

釣り道具屋の冷蔵庫のなか
ブドウムシはひっそりとねむる。
蛾にも蜂にもならないままで。



(未完詩集『百蟲譜』より)


自由詩 ブドウムシ(百蟲譜44) Copyright 佐々宝砂 2004-08-10 02:13:38
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