地球の丸さの前に立ったとき
小原あき

優しさの前に立ったとき
どうしようもなく
人見知りをしてしまう
なかなか差し出せない手を
ぎゅっと握って
その手のひらは
汗だくになってしまう


嬉しさの前に立ったとき
どうしようもなく
探し物をしてしまう
種を集めて
配り歩くため
お辞儀をしたまま
注意深く地面を探す


怖さの前に立ったとき
どうしようもなく
手を合わせてしまう
神様はどこにでも隠れている
突き放したり
見守ったり
さっき倒れた木の上にだって
ほら、、、


悲しさの前に立ったとき
どうしようもなく
のどが渇く
流れ出た涙を
コップ一杯分
飲み干すと
すっかり治まってしまって
雨上がりの匂いがした


美しさの前に立ったとき
どうしようもなく
頬が赤くなる
熱っぽくなる
寒気がする
風邪をひいて
寝込んでしまう


寂しさの前に立ったとき
どうしようもなく
しゃがみこんでしまう
ひざを抱え込むと
空みたいな体育館の
天井が見える
きっとあそこに
吸い込まれるのかもしれない


やましさの前に立ったとき
どうしようもなく
食べたくなる
とりあえず目の前にあった
あんぱんを食べたら
ますます食べたくなった
そのうち
世界中を食べつくすかもしれない


地球の丸さの前に立ったとき
どうしようもなく
その線を辿りたくなる
うまく丸が描けないわたしは
その線の先を
どうしても知りたくなってしまう








自由詩 地球の丸さの前に立ったとき Copyright 小原あき 2008-12-11 20:42:46縦
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