タガメ (百蟲譜42)
佐々宝砂

水埃にすっかり覆われて
ほんのすこしも
動きそうになかった
実際さわっても動かなかった

二本の前肢は
がっちりとハヤをつかまえていたが
そのハヤさえも
半ば腐っているように見えて

この川ももう半ば腐っていて
その半ば腐った川にタガメがいるなんて
信じられないというより辛くて
タガメよもうがんばるなと呟く

しかしタガメは死ぬまで生きるのだろう
生き腐れても



(未完詩集『百蟲譜』より)


自由詩 タガメ (百蟲譜42) Copyright 佐々宝砂 2004-08-08 23:12:51
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