窓のある部屋
チアーヌ

ずっとここに住んでいる
ここがどこなのか
わたしにはよくわからないけれど
アル日
ここに
白い服を着た
顔のない誰かが
わたしを連れてきてくれた
わたしの手を引いて

それからずっと
わたしはひとりでここにいる
暑くなく
寒くなく
食べものと
水と
ふとんがある

時折
携帯電話に
メールが来る
「退屈じゃない?」
「元気にしてる?」
「こんど遊ぼうよ」
みんなわたしが
退屈しているのだと
思っているらしい

そんなことないのにな
だって

この部屋には
窓があるんだもの

わたしは退屈すると
床に敷いたラグマットを
ひっくりかえす

そこには
50センチ四方の
開閉出来ない
窓がある

しばらくまえ
窓の下は海だった
暗い水の中
マグロが泳いでた
少し怖かったけど
しばらくの間
わたしは見つめつづけた

何日かまえ
窓の下はゆうえんち
メリーゴーランドが
ぐるぐる回っていた
わたしはずっと一緒に
メリーゴーランドの
歌を歌った

昨日は
窓の下は高速道路で
車がびゅんびゅん走っていた
日が暮れると
赤いテールランプが
きれいに見えた

そして今日は

ひとつの家族が
暮らしているのが
見える
どこにでもある
リビングダイニングルーム
パパとママと
小さなこどもがふたり
そんな
ひとつの
家族が
暮らしている
わたしは
一緒に暮らしているような
気分になる

ここがどこなのかは
わからないけれど

わたしは
たのしい

白い服を着た
顔の無い誰かが
また迎えにきてくれるまで

窓はあるけど
ドアの無い部屋で

わたしは
たのしい



自由詩 窓のある部屋 Copyright チアーヌ 2004-08-06 11:48:01
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