まるみ
恋月 ぴの

色鮮やかな薄衣をまとった山あいは
戯れて欲しいと無言でせがみ
得も知れぬ愛おしさと
恋の味とは甘さばかりでは無いことを知る

その味わいのほろ苦さよ
古い峠道の傍らで人知れず朽ち果てた祠でさえも
ここに在ったと言う歴然とした事実があり

絡ませた手指で契るふたりは
来る季節への不明を掻き消そうとして

刹那に歌い
刹那に酔う

そして見上げた空遥か幾筋もの蒼い雲たなびき
静かと拡がる波紋の只中
口吸いに解けゆく柔肌のまるみを誘う
  




自由詩 まるみ Copyright 恋月 ぴの 2008-10-25 16:18:19
notebook Home 戻る