焚き火
小原あき

立ち上る煙を見ると
その先に魂を探してしまう
人ひとり死んだのに
山は頬を染め始め
わたしは焼き芋を食らう

パチパチ、と鳴る
時を刻むより不規則で
ずっと我慢していた拍手を
本当は贈りたかった

あの人に

あの煙の先で
振り向かずに
空へ飛んだ

あの背中に

一雨ごとの秋の深まりが
あの人の最期の贈り物
涙雨の中
わたしたちは手を合わせ
煙が消えないように
祈った



いくら火を焚いても
寒さが消えません
それまで上着がいらなかったのは
あなたが包んでいてくれたからでしょうか

寂しさの空気が
より一層わたしたちを
冷やしていくのです



パチパチ、と鳴らす

本当は
本当に

最期に
贈りたかったのは




自由詩 焚き火 Copyright 小原あき 2008-10-14 15:36:39
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