ひるねこ よるねこ
いとう



(窓の)隙間からひるねこが洩れてくるので
(夜が)さらに重くなる
(部屋の)すべてがひるねこで満ちていき
ひるねこ(の時間)が
姦しく はびこっていく


山ほどのよるねこが路上に佇んでいる
小さな群れがいくつも固まってよるねこを形成している
日の当たるその場所によるねこは留まり
誰の目にも映らないまま振動している



(家具の)裏側にひるねこが浸入していき
(境界が)よくわからなくなる
(影の)輪郭がつながって
ひるねこ(の色彩)もまた
夜とともに
揺らぎ始める
(部屋は)ひるねこに取り込まれていく


よるねこは薄く広がっている
暖まるとともに粘りがなくなり
さらりと流れ出し路上を覆っている
影の中には入らない
よるねこ(の形)は
影に沿って定められる



口腔からひるねこが入り込む
鼻腔からも入り込む
(間隙に)滲み入りながら
浸透し 変質し
漏洩する 噴出する
そのように
ひるねこの名は獲得される
(境界は)溶け出していく


夕焼けがよるねこを苛立たせる
敷き詰められたよるねこがいっせいに
沸騰し 膨脹し
蒸発する 拡散する
そのように

よるねこは名を変えていく
(夜に)向かい(窓を)狙う


朝焼けがひるねこを落ち着かせる
部屋にいたものはすでにひるねことなり
ひるねこの辺縁は失われている
光とともにひるねこは固まり始め
群れとなって路上に佇む






自由詩 ひるねこ よるねこ Copyright いとう 2003-09-15 10:30:46
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