えいえんとしてのラリー
灯兎

海辺のテニスコートまで歩いていくと
忘れられた言葉たちが孤独なラリーをしていて
ボールを打つたびに会話をしていた

僕たちは細かく絶望的に分たれた世界の層の間にいるんだ

ここでは漂着する場所さえ選び取ることができないんだね

そうだよ。だから僕らはここで結晶化を待っている

たまに忘れそうになるよ

あゞごらん

何だい?

白磁体の雪片がセンターラインに落ちていく

嗚呼とても悲しいね

何処にも行きつかないけれど
何処かからは発車してしまった
時刻表に載らない貨物列車のような会話
黄緑のボールが弾むたびに
彼らの濁点と句読点もひらひら揺れている

夕焼けが彼らのシルエットを映しだすと
堆積した時間が 少しずつ結晶化しているのが見えて
それを教えてやるべきか迷ったけれど
止めて はっか煙草に火をつけた

この灰のように 結晶化した時間はすぐに零れおちるものだから
きっと彼らは汗まみれの接続詞が結晶化するまで
ラリーを続けることになるだろう
それでいいと 今は思う


自由詩 えいえんとしてのラリー Copyright 灯兎 2008-10-02 18:50:59
notebook Home 戻る  過去 未来