鱗雲と彼女
KETIPA

うすくうすく皮膚をはいだ
 剥がした膜のような皮から光が透けた
板に彫刻をほどこす要領で 次から次へと
腕に軽くあてたカミソリが はいだ

腕に残った剥がし跡はほんとうにいたそうだった
うっすら赤く 夕焼けのようにじくじくと
鱗があればよかった
 触ると痛むうろこではなく 触られても分からない鱗が
あればよかった

あればよかった


 茶褐色にかたまり こびりついた表面のへこみ
うろこではなく鱗だった
でもこれは  痛い んだって
鱗なのに 
うすくてうすくてうすくて うずいた両腕でお箸ももてない
そうあまりにもうすくて 頼りない
 たまごの薄皮のような  うすくても
あればよかった?


観覧車が遠くに見えた
痛そうに廻っている
鱗があったらいいんだよ


夕空の下で逆立ちしても鰯にもなれないのに

 観覧車の先の雲が 自分だけ


  ずるいね


自由詩 鱗雲と彼女 Copyright KETIPA 2008-10-01 21:11:46
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